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優れた能力を持つスタッフとの連携で、24時間365日対応を実現

優れた能力を持つスタッフとの連携で、24時間365日対応を実現

埼玉県久喜市・しらさきクリニック

 2016年4月に開院した埼玉県久喜市のしらさきクリニックは、大学病院あるいはインターベンション治療に積極的な基幹病院に勝るとも劣らない経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の施行数を誇り、年間施行数は700件を超えることもある有床のクリニックです。急性冠症候群(ACS)をはじめとする心血管疾患の救急患者に24時間365日対応し、埼玉県東部の地域医療に大きく貢献しています。ハートチームとしての取り組みについて、院長の白﨑泰隆先生とその診療を支えるスタッフの皆さんにお聞きしました。

お話を伺った方々
白﨑泰隆先生(しらさきクリニック院長)
千葉健さん(統括部長兼医療技術部部長、放射線科技師長)
堀田大祐さん(医療技術部副部長、臨床工学科長)
張本あけみさん(看護部主任)

自らのクリニックでオーダーメイド医療を目指す

 院長の白﨑先生は、久喜市と同じ利根医療圏にある埼玉県蓮田市の出身。浜松医科大学を卒業後、心血管インターベンションを専門とする循環器内科医として、静岡県内にある二次救急24時間365日対応の総合病院で多くの診療経験を重ねました。さらに、全国でも指折りのハイボリュームセンターでインターベンションの腕を磨きたいと考え、2008年には千葉県松戸市にある新東京病院の循環器科に入職。最先端の治療技術を体得されました。

 その後は埼玉県に戻り、埼玉医科大学国際医療センター心臓内科助教、JA埼玉県厚生連久喜総合病院循環器内科第一診療部長、東埼玉総合病院循環器内科部長などを経て、2016年4月にしらさきクリニックを開院しました。「昔から、埼玉県の救急医療事情をより良くしたいと感じていました。県内の医療機関で働き始めたことでそれをより強く実感するようになり、自らの志す循環器医療を自分の育った地域で目指したいと考え、クリニック設立を決意したのです」。

 クリニックの立ち上げには、医療技術部(放射線科、臨床検査科、臨床工学科、薬剤科、栄養科、リハビリテーション科)部長で放射線科技師長の千葉健さん、医療技術部副部長で臨床工学科長の堀田大祐さんも参加しました。

「自分が理想とする医療を実現させるためには、クリニックをつくるしかない。一緒にやってくれないかと相談され、大きな組織だからこそできることがある一方、組織が大きいことによる小回りのきかなさを私も実感していたところでしたので、参加しました」(千葉さん)。

「私が新東京病院に所属していたころ、白﨑先生とめぐり会い、一緒に仕事をさせていただきました。さらに、久喜総合病院のカテーテル室立ち上げでも声をかけていただきました。その後、白﨑先生が独立開業されると聞き、私が生まれ育ったこの地域の医療に貢献できればと考え、立ち上げのお手伝いをさせていただいたのです」(堀田さん)。

 白﨑先生が理想とするのは、患者さんとともに実践するオーダーメイド医療。「患者さんにまず病気をよく理解していただき、治療選択肢を知っていただいた上で、できる限り患者さんの希望に添った医療をしていきたいと思っています」。

常に循環器内科医が待機し、多くの救急患者が搬送

 同クリニックで診療の中心となるのは心臓・血管内科、不整脈科ですが、消化器内科、呼吸器科、糖尿病科、皮膚科の外来診療も行っています。開院4カ月後の2016年8月に県の救急告示認定を受け、24時間365日対応の循環器救急医療を開始しました。周辺地域で、夜間を含め常に循環器内科医が待機している医療機関は同クリニックだけ。医療圏の内外から、多くの心血管救急患者が搬送されてきます。

 夜間は看護師3人体制で、診療放射線技師と臨床工学技士はオンコール対応。スタッフは皆さん、近隣地区に在住しています。緊急のカテーテル治療が入った場合は、白﨑先生も駆け付けます。「部門長を務めるスタッフはいずれもエキスパートなので、自分の目だけでなく、スタッフから寄せられる科学的根拠に基づく情報を頼りに治療を行っています。ハートチームが一丸となって治療に当たることで、ミスの低減にもつながっていると思います」(白﨑先生)。

 千葉さんは「現在、当施設の放射線技師は5人ですが、夜間の緊急対応は私ともう1人のベテラン技師で担当しています。夜間だから十分な対応ができなくても仕方ないというのではなく、限られたスタッフで行わなければならない夜間だからこそ、教育された専門性の高いスタッフが当たるべきです。日中の業務を完璧にできて初めて、夜間を任すことができると思っています」と話します。

「夜間に循環器救急の患者さんが搬送された場合は、他院では数人で対応するような多くの業務をほぼ看護師1人だけでこなしています」と話すのは看護部主任の張本あけみさん。「当施設では夜勤に入るということは、カテーテル業務ができるということ。救急隊からの電話を受け、症状などから循環器疾患と予想された場合、ベッドが空いていれば看護師の判断ですぐに受け入れを決めます。あらかじめ、院長からそのように指示されているのです」。さらに、「看護師は患者さんとともに移動し、そのまま一緒にカテーテル室に入ります。同じ看護師がずっと付き添っているので、患者さんも同じ声が聞こえて安心するのではないでしょうか。そこでも多くの場合、看護師は1人で対応します」。

DTBT短縮など、時間短縮に向けた取り組み

 同クリニックのPCI施行件数は、2017年が734件、2018年が618件でした。医療従事者による最初の接触からバルーンでの冠動脈拡張までの時間「Door to Balloon Time(DTBT)」は、2017年が65.4分、2018年が66.6分。これは、日本循環器学会の『急性冠症候群ガイドライン』で推奨されている90分以内に十分収まるレベルですが、白﨑先生は「治療法が大きく異なる大動脈解離などとの鑑別診断をしっかり行った上で、さらなる短縮を目指したい」と話します。

 DTBTを短縮するために、同クリニックではこれまでどのような工夫をしてきたのでしょうか。「まず、救急室の滞在時間を減らすことが重要です。当施設で独自に作成した19項目から成る心カテチェックリストに従い、1つ1つミスのないよう順番に進めていきます。プロトコル通りできるよう、各スタッフの研修にも力を入れています」と白﨑先生。

 「看護師もチェックリストに従って進めています」と張本さんも口をそろえます。「看護師は救急室を準備し、患者さんが到着したら12誘導心電図を取って、結果をバイタルサインとともに医師に伝えます。採血は、一般には血液が固まるまで10分ほど待つ必要がありますが、当施設では待ち時間が不要なスピッツを使用し遠心分離機にかけています」。こうした看護師の協力が、DTBTの短縮につながっているのです。

 さらに医師の習熟度も時間短縮に大きく影響することから、白﨑先生は「PCIは全て、私を含めた3人の医師(日本心血管インターベンション治療学会専門医2人、認定医1人)が行っています」と付け加えます。

 一方、放射線技師が行う試みとして、千葉さんは「CTの結果報告は、検査後60分以内を目標としています。普通は2~3時間かけて画像をつくり、結果を伝えるのは後日の病院がほとんどだと思いますが、専門性の高い技師が患者さんの年齢、症状、危険因子などを考慮し、必要な箇所と不要な箇所を速やかに判断することで時間短縮が可能になります。画像検査においては迅速性を重視し、特にCTでは、通常難しいとされる当日中の結果報告を実現させています」と胸を張ります。

患者さんのために、低侵襲性と安全性を実現

 カテーテル治療での低侵襲性と安全性を高める工夫として、白﨑先生は、ショック状態でなければ橈骨動脈穿刺で行うことと、解離を起こさないようサイドポートが開いているカテーテルを使用することの2つを挙げます。同クリニックでは、慢性完全閉塞(CTO)症例も年間60~70例を手がけていますが、こうした難易度の高い症例では特に、臨床工学技士がモニタリングしながら鎮静剤の量を最小限に維持し、看護師は患者さんの顔に近い位置から変化を注意深く観察するようにしているといいます。「また、カテーテル室外のモニターも含め、第2、第3の目を加えて入念にチェックしています」。

 血管造影に最新バイプレーン装置を使う千葉さんは、日本血管撮影・インターベンション専門診療放射線技師の資格を持ち、装置の設定や管理を行っています。千葉さんは「認定技師は画質を落とさずにX線量の低減を図り、画像の最適化を行わなければなりません。線量の最適化、造影剤低減、撮影時間短縮などはもちろん、術者の立場に立って、患者さんごとに最も適切と思われる画像を提供するよう心がけています」と話します。ステントの強調画像についても、アプリケーションの調整により医師が視線を変えずに確認できるよう工夫しているそうです。

 PCI施行に際して、堀田さんを含め5人の臨床工学技士が受け持つ重要な業務の1つが血管内超音波(IVUS)検査です。血管撮影では分かりにくいびまん性病変の他、正確な病変長、側枝の状態、プラークの性状、血栓の色調や量、破裂のリスクなど、さまざまな情報を速やかに医師に提供しています。「後輩には、われわれにとって検査や治療は年間何千件のうちの1件かもしれないが、患者さんにとっては1分の1、その1件が大事なんだという話をよくしています。白﨑先生が掲げる、『患者様を自分の家族だと思い接する』『患者様を第一に思い、常に考えながら動く』という当施設の理念を、いつも大切にしていきたい」と話します。

 白﨑先生とスタッフの信頼関係が、同クリニックの優れたカテーテル治療を可能にしているのです。

全スタッフが参加する毎朝のカンファレンスなどで人材を育成、的確かつ効率的な対応が可能に

 こうした質の高い医療を提供するために重要なのは「何より人材育成です」と白﨑先生は言います。「例えば、看護師だからこの勉強会は参加しなくてよいなどとは考えず、全スタッフにいろいろな知識を持ってもらいたいと考えています。毎朝行うカンファレンスは職種別ではなく、医師やその他の医療スタッフも一緒に参加し、情報を共有するようにしています」。同クリニックの質の高い医療は、幅広い知識を持ったスタッフが密に連携することで実現されています。人手は限られていますが、その分、人材育成に力を入れることで、的確かつ効率的な対応が実現されているのです。

 白﨑先生が指揮する人材育成の実働部隊長である千葉さんは「大病院と違いクリニックは小回りが利くので、スタッフ間のコミュニケーションを密に取り合うことができます。当施設は循環器が中心なので、専門性が高いスタッフの教育も行いやすいですね」と話します。定期的に勉強会も開催しており、実臨床で必要になる心臓蘇生(CPR)テクニックの指導も、Immediate Cardiac Life Support(ICLS)インストラクターの資格を持つ千葉さんが担当しています。実践的な教育としては「メディカルスタッフが全員参加する朝のカンファレンスが一番役立っています」と千葉さん。患者さんの画像を見ながら申し送りを行い、分からないこと、迷っていることなどをその場で相談できる点が何より有益だといいます。

 一方、堀田さんもスタッフにカテーテルへの理解を深めてもらうための勉強会を開いています。「毎月1回、比較的時間をつくりやすい昼の時間帯に医師とメディカルスタッフに集まってもらい、開催しています。日中にスタッフ全員が集まれるスペースはないので、30分ずつ4~5回に分けて行います」。

 看護師として最後の挑戦と考え、あえてハードルが高い循環器救急のクリニックを選んだという張本さんは「入職当初からの徹底的なスタッフ教育、そして毎朝行われるカンファレンスや勉強会が自分を成長させてくれました」と振り返り、「毎朝のカンファレンスは事務を含めたスタッフ全員が患者さんの状態を把握することができ、そして勉強することもできる大事な場なのです」と強調します。

 地域医療への貢献を掲げ、24時間365日の循環器救急対応と患者さん主体のオーダーメイド医療を実践するしらさきクリニック。白﨑先生と各スタッフが相互に支え合いながら、それぞれの業務を高いレベルで実行していることが分かりました。

しらさきクリニック
〒346-0032 埼玉県久喜市久喜新1180-1
TEL:0480-22-9900(代表)/ FAX:0480-22-9901
URL:http://shirasaki-heart.jp/

 

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